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2010年3月 2日 (火)

違う視点が見た環境世界 生物から見た世界

100227普段見ている世界を、他の誰もが見ていると思ってしまっている自分がいる。昔、理科の授業でトンボは複眼を持っていると教わったが、そのトンボでさえ同じ光景を見ている、それはありえない事なのだが、意識としてはそう思い込んでいる。

そうした思い込みの世界を否定し、動物たちが見ているであろう世界を易しく解説してくれるのがこの文庫。著者エクスキュルは動物学を修めた科学者だったが、この本の基礎となっている「環世界」という理念が客観的でないという理由で必ずしも当時受け入れられなかったのだという。

そもそも、その客観的な世界は人間が構築した物であり、広く認められているものでさえ、最大公約数によるものでしかない。きれいな部屋が落ち着く人もいれば、ある程度雑多な環境のほうが心休まる人もいるはずであり、環境の善し悪しは受け止める人の主観によって大きく異なる。

この本ではそうした環境を構成する主体の違いをまず認識したうえで、それらがその環境をどのように知覚し、そして行動するかについてその違いを語っていく。こう書くと難しくなってしまうが、要は同じ場面をたとえばハエや、果てはウニがどのように見て、どのような行動をするかについて易しく説明してくれる。その違いを追っていくだけでも楽しい。

この本を読んでから外に出て生き物に出会うと、何故か不思議な気持ちになった。彼らは一体自分をどう見ているのだろうか、と。実際には自分は彼らにとって単なる石ころに近いものなのかもしれないが、そう思ってみるのも楽しいし、また違った世界が見えてくる。他者を理解するというのは、案外こういう事なのかもしれない。

生物から見た世界

エクスキュール著

岩波書店(岩波文庫)

660円(税別)

2010年1月29日 (金)

かつて恐れた地獄、再び ドレの神曲 

100123dore子供のころ、図書館にあったこの本がなぜか怖くて、目にするのも嫌だった。そう意識すると必ず目が行ってしまうので、その棚を避けて通ったものだ。今から思うとなんでそんなに怖がったのか不思議だけど、再び手にしてその理由がわからないことはない。

ダンテの不朽の名作、神曲。道に迷ったダンテが導かれるように地獄、煉獄、そして天国を廻っていくという壮大な幻想的世界を、フランスのギュスターヴ・ドレが挿絵で再現したのがこの本だ。何度か出版されているが、今回3回目の出版という事で読みやすいサイズ、しかも比較的廉価ということもあり、購入した。

極細の線で描かれた黒と白の世界は、まさに地獄を再現するにはふさわしい。ただ細密で暗いだけではなく、細い線が幾重にも重なって微妙な明暗、深い陰影を表現していて、線の持つ力の凄みを感じる。

三篇構成だが、ダンテの筆力、ドレの表現力双方とも地獄篇でこそその本領を発揮しているようだ。読み進めながら、人はここまで冷酷な罰を考え出すことができるのか、と思いながら、同時にそんな世界に不思議と魅かれている自分がいることにも気がつく。いつの間にか怪しい心地にさせられる、そんな本だった。

ドレの神曲

原作 ダンテ 挿絵 ギュスターヴ・ドレ

翻訳・構成 谷口江里也

宝島社刊

1,429円

2007年8月27日 (月)

新古今和歌集上

Myrjjuin
31文字の中に凝縮した世界を表現してきた和歌の一つの頂点が新古今和歌集になった。それは日本人の表現力の粋であり、ことばの美しさは意味がわからなくとも音韻の響きだけで理解することも出来る。しかしやはり意味も知りたい。

新古今和歌集では今まで説明まできっちり書かれた手ごろな本が無かったが、最近角川文庫から出たこの本は説明と作者の略歴まで記述が詳しく、まずは現状で最良の入門書になっている。

こうした古典はなかなか通して読みづらい。(僕だけか?)特に和歌集などは全てを読み通すのは結構忍耐力がいるものだ。しかし和歌は元々31文字の世界、折に触れて数種ずつ広い読みするほうがかえって合っているのではないだろうか。また、展覧会で書画に接するとき書かれた和歌を調べるときも、こうした文庫であれば持ち運びに便利でとても重宝する。

上巻は春夏秋冬の四季の歌や別れの歌を収めている。まだ全部読み通してはいないが、近くにおいて折に触れて楽しむ。そんな読み方でこの本はいいんじゃないかと思っている。

新古今和歌集上
久保田淳訳注
角川書店刊(角川ソフィア文庫)
496p
933円(税別)