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2014年4月

2014年4月30日 (水)

テヌータ・グアド・アル・タッソ イル・ブルチャート2011 DOCボルゲリ

140429ilbruciatoボルゲリという土地は不思議な場所だ。イタリア、トスカーナのDOCで、白ワインよりも赤ワインで有名な産地には違いないが、その品種はカヴェルネ・ソーヴィニヨン、メルロー100%が許され、シラー、そしてトスカーナの雄であるサンジョヴェーゼは50%まで認められている。ここでは国際品種が優位なのである。

フィレンツェの南、ティレニア海沿岸の斜面に広がる畑からは、スーパータスカンの元祖であるサッシカイアが生み出され、イタリアワインの潮流の一つを作ったこの地で、テヌータ・グアド・アル・タッソは温暖な気候を利用し、ボルドー品種を中心に栽培している。旗艦ワインのグアド・デル・タッソはカベルネ・ソーヴィニヨン主体で、そのセカンドであるこのイル・ブルチャートはカベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロ30%にシラー他20%を加えている。

色は濃密で黒味の強いダークルビー。香りは濃厚なカシスを感じ、その後黒胡椒、墨汁、アニス。

口に含むと良く熟したとろみのある果実味に、繊細な酸味が緊密に寄り添う。序盤から均衡した構成を感じ、揺るぎのない味わい。少し硬さと、やや凝縮感に物足りなさを感じないではないが、緻密なタンニンと繊細な酸は今後成熟していくであろうポテンシャルを備えている。中盤から後半も静謐でデリケートさは乱れず、精緻な味わいを貫く。

余韻は絹のようなシルキーさを最後まで保って、育まれた斜面の畑を想像させるような景色を思い起こさせるように、穏やかに幅広に果実味が去っていく。

カベルネ・ソーヴィニヨンのワインを飲むことが少ない自分だが、その質と懐の深さを感じさせてくれた。ボルドー的なセパージュだが、さらに果実味を親しみやすく、そしてより構成を緊密にした印象。国際品種でありながら、イタリアらしさを表現した一品といえるだろう。

【エノテカ グランフロント大阪店 4,200円】

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2014年4月29日 (火)

快勝に複雑な気持ちも アーセナルvsニューカッスル戦

140429arsenalプレミアも残り3試合。3強の優勝争いに置いてかれた悔しさはあるものの、最低限のCL出場権は確保してもらわなければならない。5位のエヴァートンが足踏みしているだけに、ここは勝って自力での確定を引き寄せたいニューカッスル戦。

先発はGKスチェスニー、DFモンレアル、コシエルニー、メルテザッカー、サニャ、MFアルテタ、ラムジー、ポドルスキー、カソルラ、エジル、FWジルー。

ホーム戦、モチベーションからしてアーセナルが優位に運ぶべき試合で、しかもエジルとラムジーが復帰してきたとなれば、それほどの不安は感じなかったが、終始アーセナルペースで運んだ、安心して見られた試合だった。

得点は25分のカソルラのCKからのセットプレー、これに走り込んできたコシエルニーが押し込んで、先制点を決めると、41分にはアルテタの縦パスにジルーが反応し、相手DFを抜き去ってのシュートをGKに阻まれ、そのデフレクトを再び蹴り込むもDFに弾かれたボールが字エジルの真ん前に転がり、これを落ちついて決める。前半で2点を決めたアーセナルが、後半65分には2点目を決めそこなったジルーが頭で押し込む3点目のダメ押しで、3-0の快勝となった。

残り試合僅かとなって役者がそろい安定した試合運びで快勝した試合だっただけに、余計悔しさが残った。いつもながら、この布陣で通せたら3強に割って入って優勝争いも可能だっただろう。それほどエジルの巧さ、ラムジーの運動力と積極さが際立っていた。その二人につられるように久々にカソルラの技も感じられ、そして前の好調さによってアルテタの動きが活きた試合だった。2点目のジルーへ運んだ動きはそれが発揮された瞬間だったと思う。

エヴァートンが敗れたことであと1勝で4位以内が確定するアーセナル。昨年末を考えれば悔しい状況だが、FA優勝の芽も残っているだけに次節の勝利を信じたい。

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2014年4月24日 (木)

ピーレ・エ・ラモレ キャンティ・クラッシコ ラモーレ・ラモーレ2010 DOCGキャンティ・クラッシコ

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こんなに連続でトスカーナ、サンジョヴェーゼを飲むのも不思議なものだが、凝ってしまったので再びキャンティ。

キャンティと聞くと、敬遠してしまうのはまだまだワインが一般的でなかった頃、カジュアルなイタリアンに置いてあった酸っぱいだけの薄っぺらいキャンティの記憶があるからなのだろう。当時のDOCに依れば、キャンティは白ブドウ、酸味の強いトレッビアーノを混ぜることが許されていたから、今思えばその影響もあったのかもしれない。

しかしキャンティ・クラッシコはサンジョヴェーゼを80%以上、その他黒ブドウを混醸することが許され、そしてその生産地は9つの村に分かれている。このピーレ・エ・ラモーレが本拠とする村はグレーヴェ・イン・キャンティで、クラッシコを名乗れる村々でも北、標高は350mから500mの丘に位置し、南西向けの畑で樹齢約20年、中には70年を超える樹齢の古木で栽培されたブドウから造られる。6日間のマセラシオンの後、発酵はステンレスタンクで26度以下で8~10日、その後大樽で12か月熟成の後、6か月の瓶熟を経る。

色は凝縮感のある、山葡萄的な色合いの暗いルビー色。香りはブルーベリー、カシスの甘い香りが強く放たれ、ヴァニラ、カカオ、干しイチヂク、黒胡椒の香りも感じられる。

アタックは整った瑞々しい清涼感のある酸味が初めは遠慮がちに広がり始め、その後涼しげな赤い果実の旨味がきれいに乗ってくる。ボディは細めだが、繊細なタンニンとピュアな果実の旨味が密に絡み、左右の対称を崩さない絶妙のバランスを提示する。凝縮感はそこそこだが、隙のない味わいが後半まで保たれ、後半までクールな現代的味わいを演出する。

余韻は最後まで調和する酸と果実のピュアな旨味がほっそりと残り、ゆったりした心地を保ちつつ、爽やかなフィニッシュに至る。

複雑さよりも、サンジョヴェーゼのピュアな酸味と若いベリーの味わいの個性をストレートに表現したワインと言えるだろう。飲んでいて負担感のない、素直にブドウの旨味が感じられる、これぞサンジョヴェーゼのイメージといったところかな。

【? 2,800円】

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2014年4月23日 (水)

チャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナ ロッソ・ディ・モンタルチーノ2009 DOCロッソ・ディ・モンタルチーノ

140420ciaccipiccolominidaragonaなかなか生産者の名前が覚えられない自分だが、この生産者は即座に覚えてしまった。長いが印象強い名前、チャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナ。

モンタルチーノの東南、カステルヌォーヴォにある名門は、17世紀には法王も輩出した伯爵家で、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノでは代表的な生産者として定評を持つ。そのワインはブルネッロから想像するイメージを良く表現したビターチョコの味わいを持った重厚な味わいだ。そのロッソはどうだろうか?

色はやや曇った色合いのダークルビー。香りはザクロ、プラムの果実香に加え、錆釘、血のような香りも感じられる複雑さ。

アタックは甘口のワインと見紛えるくらいの濃密な黒いベリーの果実味。その濃厚さをしっとりと抱えるまろやかな酸味がバランスを取っている。細かなタンニンはやや粗さも伴うが、酒質を下支えしつつ、抑揚を抑えるグリップ力を表現する。後半はビターチョコのような甘みが顔を出し、甘みと酸味が密接に絡んで風格を感じさせる。

余韻は柔らかに熟したベリーの甘みが程よく広がりつつ、滑らかなフォルムを描いて収束していく。

かつて飲んだブルネッロの味わいに負けないくらいの濃密な味わいは、さすが名手の表現力と言えるだろう。名手の味わいを気軽に楽しめるロッソ・ディ・モンタルチーノというカテゴリーに感謝したい。

【Wineshop FUJIMARU 3,500円?】

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2014年4月22日 (火)

ポデーレ・サリクッティ ロッソ・ディ・モンタルチーノ ソルジェンテ2010 DOCロッソ・ディ・モンタルチーノ

140420salicutti引き続きサンジョヴェーゼ強化月間。たまたま阪神百貨店の血かワイン売り場でモトックスフェアを開催していて、そこでトスカーナワインの特集コーナーがあり、店員さんに勧められて買ってきたものの一本がこれ。コロッセオのようなものを描いたエチケットも素敵だったのも、これを選んだ理由の一つだった。

モンタルチーノはサンジョヴェーゼでも特別な街に違いない。しかしその歴史はそう古くはない。ブルネッロ(サンジョヴェーゼ・グロッソ)100%で大樽熟成4年を経て作り上げる製法は、ビオンディ・サンティによって1888年に始められたもので、その後1967にDOC、1980年にDOCGへとブルネッロ・ディ・モンタルチーノが昇格するにつれて広まっていったものらしい。

モンタルチーノの街から南東の地に畑を持つポデーリ・サリクッティは、11haのブドウ畑の他に1haのオリーヴ畑、3haの林を所有している。オーナーのフランチェスコ・レアンツァ氏は真摯にワイン造りに取り組んでいるようで、HPにも詳細なデータを開示している。このロッソは自然酵母を用い、ステンレスタンクで発酵、その後はアリエ産のオーク樽で18か月熟成、清澄濾過は行わない。

色は紫がかったダークルビー。香りはストロベリージャム、カシスに加えてスミレ、タバコ、ミントが感じられる。特にミントの香りが顕著。

口に含むと軽やかな果実味とピュアな酸味がすっきりと広がり、その後やや硬質なタンニンを伴ったフォルムが連なる。全体の酒質はバランスよくまとまり、よく躾けられたワイン。凝縮感は中程度ながら、酸とタンニンのコントラストが明瞭で、気持ちよく喉を通る。中盤から後半のシルキーで抵抗感のないベリーの旨味も心地よい。

余韻は中程度でやや渋みも残るが、清廉な味わいを最後まで透徹して締めくくる。

ボリューム感はロッソ・ディ・モンタルチーノなので中程度ではありつつも、抵抗感のない清潔な味わいに満ちており、心地よく飲み干せるワイン。サンジョヴェーゼの特性を良く引き出したワインと言えるだろう。

【阪神百貨店 梅田本店 3,500円?】

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2014年4月21日 (月)

まずは勝利! ハル・シティvsアーセナル戦

140420arsenal時間がないので、本日は感情だけ。

やっぱアーセナル、最高!役者が戻ってきて、全ての歯車が回った試合。ラムジーの先制、ポルディの2得点も「らしい」得点で、久々にスカッとした。

0-3の勝利をぜひ再びFA決勝で。その日を楽しみに本日から出国します。

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2014年4月20日 (日)

現実と虚構の狭間に惑う アンドレアス・グルスキー展

140420andoreaあまり写真に詳しくないので、これまで足を運ぶ動機に欠けていたのだけれど、この展覧会は今年の中でおそらく自分の中のベスト3に入るだろう。会期末に入って、自分の不明を恥じるばかりだ。

http://gursky.jp/index.html

この日も予想に反して多くの鑑賞者が訪れていた。しかも学生と見える若い方々が多い。そして非常に熱心に作品について語っている姿も見られた。アンドレアス・グルスキー、1955年生まれのドイツの写真家の描く世界は実在の中の虚構と言っていいかもしれない。

彼の作品の多くは、自分が思う写真作品とは大きく異なる。写真が現実世界の一コマを切り取ってその瞬間を見せる、と思っていたのだが、彼の場合は写真とは表現の素材であって、そこから彼が見せたいものを作り上げるための最初のステップに過ぎないように感じる。

彼の作品の多くは光景を大づかみに切り取っている。そして、それは自分が現実に見ている風景の捉え方と同じものなのだ。しかし、その通常の捉え方とは明らかに異なった世界がそこには表現されている。我々がワイドフレーム故に大まかにとらえている風景を、彼は明確に表現する。そして彼はそこに色を足しあるいは除き、また無造作に人物さえも書き足している。だからそれを見続けるうちに、現実と懐疑の狭間で自分の居場所を無くしたかのような感覚に陥ってしまうのだ。たとえ眼前に何の手も加えない写真を出されたとしても、おそらく平素のような感覚で捉えることはもはや不可能になっているだろう。

代表作「99セント」は整然と並べられたジャンクフードの列の中に、それとは異なる商品を置いて揺らがせても、そしてジェイソンの仮面をかぶった店員を置いてさえも、圧倒的かつ整然とした商品の中では全体の中に呑みこまれてしまう。その中に現代社会の中で生きざるを得ない個々の営みの限界を感じられずにはいられなかった。

写真という枠を超えた表現者と呼ぶべき、稀にみる見ごたえのある美術展だった。

アンドレアス・グルスキー展

国立国際美術館

2014年2月1日~5月11日

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2014年4月15日 (火)

ラ・ブラッチェスカ ヴィノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ リゼルヴァ サンタ・ピア2006 DOCGヴィノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ

140413vinonobilesantapiaイタリア好きと言いつつも、トスカーナという王道をあまりにも知らなさすぎるので、今年はトスカーナ、サンジョヴェーゼ強化年という事に自称しているので、この日はサンジョヴェーゼにしたものの、やや主流ではないかもしれないヴィノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノを。

モンテプルチアーノで栽培されているサンジョヴェーゼは、プルニョーロ・ジョンテーレと呼ばれるクローンで、一口にサンジョヴェーゼと言っても厳密には遺伝学的にはピコロ、グロッソ、ロマーノの3系に区別されている。このブルニョーロ・ジョンティーレはグロッソに属しているブドウで、皮が厚くタニックでフルボディなワインに仕上がる。

ラ・ブラッチェスカは1990年にアンティノリが購入した。このワインはサンタ・ピアの畑で栽培されているプルニョッロ・ジェンティーレ100%によるもの。

色は濃密なダークルビー。香りはプルーン、カカオ、黒蜜、ブリュレ、ややなめし革の香りも感じられる。

序盤はボリュームのある黒味のベリーの果実味と、太めのおおらかな酸が調和し、インパクトのある味わいを押し出してくる。しかし中盤はやや控えめにスレンダーなボディの中に詰まった要素がしっかりした構成力を感じさせる。タンニンはまだこなれず粗めで、口の中にゴツゴツした感じを残すが、時と共に和らぎを見出すであろう。後半は繊細でソフトなベリーの果実味がなだらかにふくよかに広がる。

余韻はややタンニンの粗さが残りつつも、純度の高い熟したベリーの旨味で口の中を満たしながら、静かに、しかし重厚に引いていく。

非常に重厚なワインで、タンニンの粗さから言えば2006年とは言えまだまだ熟成を経る必要があるワインだろう。そしてブドウ品種的にも同じサンジョヴェーゼながらキャンティのジューシーさ、ブルネッロの奥深さとは違う、中間のバランスをとったワインと言えるのではないだろうか。やや狭間の地区のワインだけに見つめるのは難しいが、まだまだ面白いワインに出会えそうな地域のようだ。

【エノテカ難波店 4,500円?】

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2014年4月13日 (日)

メルティの執念とファビアンスキの意地 FAカップ ウィガンvsアーセナル戦

140413fabiansukiFAカップは日本で言えば天皇杯、英国のサッカーチームの頂点を賭けて戦うのだから、日本で考えられないくらいの価値があるのだろう。そして、それは下位のチームであるほどに価値があるに違いない。2部、3部、4部といった下部リーグがプレミアを破る、いわゆるジャイアント・キリングもこの大会ならではだ。

プレミアで苦戦が続くアーセナルはこの週末、FAカップで2部に降格したウィガンと準決勝を戦った。ウィガンは降格したとはいえ、昨年シティを破ってFAの覇者となったチーム、決して楽な相手ではない。既に他のタイトル可能性が消えた中で、唯一の戴冠の可能性を残したこの日はGKファビアンスキ、DFモンレアル、フェルメーレン、メルテザッカー、サニャ、MFアルテタ、ラムジー、ポドルスキー、カソルラ、チェンバレン、FWサノゴ。

下位チームと戦う時、時間がたてばたつほど相手の守備に阻まれ攻めあぐね、カウンターで失点するといったパターンが目につくアーセナルだけに、この日は早い段階での得点が是が非でも必要だった。しかし、この日もボール支配は予想通りアーセナルだったが、ウィガンの無理をしない、統制のとれた守備、ラインコントロールに徐々に絡まって、雑な攻撃が目につくようになる。

そして後半の58分、メルティがエリア内で相手の足に行って倒したプレイの反則を取られてPKとなり、これを決められてアーセナルが失点する。この悪い流れの中で見ている方の気持ちも正直切れかけてきた82分、ウィガンゴール前でのボールを巡っての混戦の中でぎぷすっが放ったボレーを最後に頭で押し込んだのはPKを取られたメルティだった!これで1-1となり、決着つかないまま延長戦に入ったもののそれでも勝敗が突かないまま、PK戦となった。

PK戦となれば、もはやGKファビアンスキに託すしかないのだが、今季で退団するであろう彼の元に神が微笑んだかのようにウィガンの一人目、二人目をセーヴ、アーセナルはアルテタ、ケルストレーム、ジルー、カソルラが確実に決めてPK戦を制し、決勝進出を決めた。

苦しい試合を辛勝したアーセナル。これでFAを制すれば2004-05以来9年ぶり11回目の優勝となり、同時に長い無冠の時代に終止符を打つことになる。待望のタイトルは目の前にやってきた。しかし、リーグ戦ではこの日7連勝を飾ったエヴァートンに抜かれてついに5位に陥落してしまった。残り5試合で苦しい状況が続くが、勝ち続けるしかないアーセナル。最後の踏ん張りを信じたい。

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2014年4月12日 (土)

美に仕えることの難しさ ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900

140412beautiful人が真に美しいと感じる時、そこに意識というものが介在するのだろうか。まさにそれに接した時、その人が置かれた環境、経験は影響するのかもしれないが、反射的に感動を催す対象こそが美、というものでないかと思っている。

それを突き詰めた芸術上の動きが19世紀の英国で起こったことは必然だったのかもしれない。それまでの絵画は何を描こうが必ず主題があった。主題に隠れて、芸術家たちは裸体の美女など真に描きたいものを描いていた。その軛を解き放ち、ただ純粋美を追求した動きが「ラファエル前派」、そしてそれが「唯美主義」へとつながっていく。その流れを辿ったのが東京丸の内で開催されている、「ザ・ビューティフル」だ。

http://mimt.jp/beautiful/

当時の主要な芸術家、ロセッティ、バーン・ジョーンズ、モリス、ホイッスラー、ピアズリー、ゴドウィンらの作品が連なるこの美術展を概観して感じたことは、心地よい安穏と不安だった。主題から解き放たれたとはいえ、ローマやギリシアに端を発する西洋美術の伝統からは抜け出せなかった彼らの作品は調和と洗練に満ち、ただその目にするところに従って鑑賞すればよい。そしてその感覚的な魅力に酔えばよいはずだった。

本展の中で、ロセッティの「愛の杯」は彼の作品の中では最高傑作だと思うし、ポスターにもなっているムーアの「真夏」は前に立つと鮮やかなオレンジの衣装をまとい眠る少女、その脇で女性が送る扇の風がこちらにも漂ってくるような清浄感に満ちている。感覚で楽しめる心地よい作品が多かったが、何故か居心地の悪さがあったのも事実だった。それは官能的なものを素直に受け止める感受性に欠けるところから発する、無意識の反発だったのかもしれない。当時の一般社会でも唯美主義に対しては道徳に反するとして批判があったそうだから、その感情は1世紀を経ても越えられないものと思えば、自分も当時の人たちとさほど変わっていないもの、と感じられて逆に面白くもあった。

全体には秀品が多く、さながらムード音楽を楽しむように鑑賞できる美術展。新しい発見というものはなかったが、たまには考え抜きにして楽しむことも重要なのだろう。

ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900

三菱一号館美術館

2014年1月30日~5月6日

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2014年4月10日 (木)

セドリック・パルペット コート・ロティ モンマン2011 AOCコートロティ

140409parpettecedric自分が最も愛するブドウ品種であるシラー、その最高峰と言えるのはエルミタージュと、そしてコート・ロティ。自分は特に後者に魅かれるのだが、それはシラーの時として暴力的とまで思える個性をヴィオニエが優しく包み込む、エネルギーを秘めつつ抑制することを覚えた大人の味わい故だ。

しかし、昨今のコート・ロティはシラー100%で造られることが多くなっているように思える。この聞きなれない作り手のロティもまたシラーによるものだ。セドリック・パルペットは元々ワイン造り農家に生まれたわけではない。義理の父が放棄された畑2.5haを1986年に購入して、しばらくはネゴシアンにブドウを卸していたのを、2003年にセドリックが受け継いで自らワインを醸し、自らの名でワインを世に送り始めた。

ブドウは100%除梗、コンクリートタンクで発酵させ、清澄なしで12から14か月の間異なる年代の228リットル古樽で熟成させる。

色は赤紫が強く感じられる、やや若い色調のルビー。香りはシラーらしい胡椒、焼芋、ビスケット、黒オリーブ、ゴム、プラム。

アタックはピュアで浸透力のある酸味に、スパイシーさを伴った黒味の果実味がバランスよく押し出す。序盤から中盤は一転して優しい整った味わいが広がってくるが、ややおとなしくまとまり過ぎている感じもする。調和かつ洗練された味わいは不満を感じるという性質ではないが、スケール感と掴み取るような迫力を加えれば、より深みと説得力をえるだろうと思えるポテンシャルを期待させる酒質。

余韻はロースト香が満ちつつスパイシーなシラーらしい味わいをしっかりと主張して、フルーティで綺麗な後味を残しながら潔く引いていく。

シラーの特徴を前面に出しつつ、ロティの気品も演出しようとする作り手のコンセプトがよくわかる味わい。ただ、一方で印象に残るかと言えばやや希薄な感じもするので、今後は個性をどれくらい表現できるかだろう。全体的には価格を考えれば良質なコート・ロティと言える。今後のポテンシャルに期待したい。

【Cave de Terre淡路町店 5,000円?】

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2014年4月 9日 (水)

テヌータ・セッテ・ポンティ クロニョーロ2005 IGTトスカーナ 

140409tenutaseteponteその時は興味があって買い置いたワイン、そのまましまっておいて飲むのを忘れていたなんてことはよくあること。ワインには申し訳ないのだけれどこれもその一つ。

このワイン自体は雑誌などで目にする機会も多い。トスカーナのお得ワインとして、価格以上の品質を褒める記事を読んだことがある。

テヌータ・サンテ・ポンティからこのクロニョーロが初めてリリースされたのは1998年というから、それほど古い話ではない。トスカーナ州の東、標高約1,000mのファヴァルト山の山裾に位置するアレッツォを本拠とし、この他に海沿いの同州南部マレンマ、そして新たにシチリアに畑を有している。このクロニョーロ2005はサンジョヴェーゼ90%、メルロー10%による。

しっとりした重みの感じられる、黒味の強いダークルビー。カシス、プラムのベリーの香りに加えて鉄、ビターチョコ、中国茶も感じられる。

口に含むと瑞々しいベリーのピュアな酸味が伸びるように広がるが、刺激の少ないまろやかなフォルムで、内包された熟した果実の旨味とこなれたタンニンの調和が品格をより高めている。味わいのボリューム感はかなりあるのだが、滑らかなフォルムと伸びやかかつ穏やかな酸が隙間を埋めるかのように働き、全体で厚みのある均整のとれた味わいを形成している。この調和はサンジョヴェーゼとメルローによるアッサンブラージュを納得させる。

余韻は全体が昇華していくように、自然な流れの中で優しいベリーの甘みが穏やかに優しく収束していく。

このコメント、実は二日目の味わいによるもので、初日も美味しかったもののやや角が感じられたのだが、次の日にはそれも取れて非常にまろやかな味わいに深化していた。確かに2千円台でこれだけの厚みと調和のバランスが取れたものであれば、高評価されているのも頷ける。美味しいサンジョヴェーゼワインに違いない。

追記 このワイン、セラーにも入れずほっといてこの美味しさを保っているのであれば、あんまりセラーセラーと神経質になるのもどうなんだろう?とは思ってしまう。あまり窮屈に考えるのもどうなのか。セラーがないときは当たり前だったのだから。

【Cave de Terre淡路町店 2,800円?】

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2014年4月 8日 (火)

ジローラモ・ルッソ エトナ・ロッソ アリナ2011 DOCエトナ

140406girolamorussoarina普段ワインは1本から、なるべく多く楽しみたい自分だけど、最近久々にハマって複数本購入してしまったのが、このジローラモ・ルッソ。イタリア、シチリアの作り手で、最近ではエトナ・ボーイズの第二世代なんて呼ばれ方もされているようだ。

2003年にカンティーナを引きついだときには、シチリアに大きなムーブメントが起こっていた。それを引っ張ったのはフランク・コーネリッセン、フランケッティで彼らの影響を大きく受けたとジローラモ氏も言う。しかし、ジローラモ氏のワインは、コーネリッセンやフランケッティのそれに比べるとやや控えめ、抑制のきいた味わいになっている。元々ピアノを学んでいた彼のセンスの為せる業であろうか、自分としてはその抑制の中にこそ気品と沸々とした情熱が感じられるような気がして、何故か無性に魅かれている。

畑による個性の違いも重要視する彼は、サン・ロレンツォとフェウドという標高650m超、樹齢60~100年の畑から単一のワインを産みだしているが、このアリナはそれに加えてカルデラーラ・ソッターナ、フェウド・ディ・メッツォからのブドウによって造られる。

色は落ち着いた赤みが艶やかなルビー色。香りはイチゴ、プラム、線香といった甘さを感じさせる印象に加えて、バックには胡椒も感じられる。

口に含むと酸、甘みがバランスよくまとまった熟した果実味をストレートに感じる。酸味とボリューム感は抑えつつ、優しさと滑らかなフォルムをより重視しているかのような落ち着いた中盤の味わい。やや凝縮感には欠けるものの、緻密で結束したタンニンがボディに深みと骨格を与え、単に繊細さだけのワインに陥らせない。中盤から後半にかけてピュアなベリーの旨味がふくよかに広がる。

余韻は純で透明感のあるベリーの甘みがほろほろとほどけるように昇華し、エレガントな味わいを最後まで透徹して締めくくる。

エトナ・ロッソは今では自分の最も愛すべきワインの一つとなったが、ジローラモ・ルッソはまさにその中でも落ち着きと情熱の二つをストレートに感じさせてくれる、まさに真の友人と呼ぶにふさわしい。このワインに出会えた事を素直に感謝したい。

【カーヴ・ド・リラックス 3,000円?】

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2014年4月 7日 (月)

全てがご破算に エヴァートンvsアーセナル戦

140407cherry寒い週末だったが、一応桜も見た。ゆっくりと月を眺めつつ、家路をたどりながら思うのは、遠くの桜よりも、近くの桜がよりいとおしく感じるということ。

しかし、帰宅後に待っていたのは悲しい現実というものか。現地では日曜日昼、日本時間21時半キックオフのアーセナル戦は、アウェイで5位4ポイント差の難敵エヴァートン戦。状況からすれば勝たなければならない試合、4位を確保するのであれば少なくとも引き分けなければならない試合のはずだった。しかし終わってみれば0-3の完敗、これで4位すらも危うい状況に陥ってしまった。思えばクリスマスには1位を走っていたあの時、この事態を予想していただろうか。

この日の先発はGKスチェスニー、DFモンレアル、フェルメーレン、メルテザッカー、サニャ、MFフラミニ、アルテタ、ポドルスキー、ロシツキー、カソルラ、FWジルー。

ホームのエヴァートンの気迫と攻撃に対して、アーセナルが後手に終始してしまった。開始3分にひやっとするシュートを放たれてから浮き足たってしまい、15分にはゴール正面でのルカクの早いシュートをスチェスニーが弾いたところをネイスミスに押し込まれて先制点を許す。34分にはルカクにカウンターからのミドルを決められ、前半に2点を取られる最悪の展開。

アーセナルは後半に入っても点を取り返すだけのイメージに乏しく、スピードもなく単にパスをつなぐだけ。トップのジルーにもボールを運べないのは、やはりエジルの不在を思わずにいられない。61分には再びカウンターからオウンゴールで3点差を喫してしまい、66分にはポルディ、フラミニを下げて負傷から復帰のラムジー、チェンバレンを入れ、71分にはジルーとサノゴを交代したものの、既に勝負は決していた。ラムジーの復帰と、85分にチェンバレンの惜しい枠内シュートがあったくらいがせめてもの材料、といっていい試合だった。

これで優勝は勿論絶望的となり、5位とはいえ後半6連勝と波に乗るエヴァートンに1試合少ない中で1ポイント差に詰められ、4位でさえ自力確保ができない状況になってしまった。チームの悪い流れが止められないアーセナルだが、FAカップでのタイトルは可能性があるだけに、ここで断ち切って再び上昇のきっかけをつかんでほしい。

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2014年4月 6日 (日)

アレキシ・ツイヘリシュヴィリ ルカツィテリ2011 グルジア(ジョージア)

140406aleksitgeorgia

グルジア、英語で書くとGeorgiaと綴るこの国は、普通であればジョージアと読むべきであろう。この国名はソ連時代に強制されたものだそうで、大国の狭間で揺れ続けた国の歴史を物語っている。

しかし、ジョージアは世界で最も誇れる歴史も持っている。それは、この国がワイン発祥の地と呼ばれていることだ。そして、今再びこの国のワインが注目されつつある。そのワインはクヴェヴェリと呼ばれる甕で仕込まれているのだ。

クヴェヴェリと呼ばれる甕で作られるワインこそがジョージアの特徴と言えるだろう。ブドウをそのままクヴェヴェリに入れて土に埋め、自然酵母による発酵、半年ほど寝かせたのちに果梗、果皮を取り除いて作られるワインは、凝縮感のある、濁りを帯びた山吹色の特徴を持つ。

ブドウもジョージア固有の品種を用いる。このルカツィテリもブドウの外観の特徴によるもので、rkaが「ブドウの根」、tsiteliが「赤」を意味したものだ。成長は遅いブドウだが生産量が多く、寒い気候、フィロキセラへの耐性があることから、旧ソ連圏で広く栽培されている。

色は凝縮感のある、濁りを帯びやや茶色がかった柿の果肉のような色。香りはグレープフルーツ、薬草、枇杷、乾燥ローズマリーの香りも感じられる。

アタックはまろやかな甘みを感じさせるが、その直後から突き刺すように迫ってくる苦みの展開が、他に例えようのない個性的味わい。その苦みも直後のインパクトから思えば驚くくらいにあっさりと昇華し、口の中に残るのは穏やかで安定した繊細な木なりの果実の甘味の感覚。酸味はやや控えめだが、全体のバランスを整えるにはちょうどいいボリューム感。

余韻はややゴツゴツした所は残るものの、コクのある旨味が豊かに広がり、やがて細い道を一気に下るかのような収束感を示す。

イタリアではアンフォラを用いてワインを作る潮流が生まれたが、それ以前からこうした甕でワインを作る歴史がジョージアで受け継がれてきた。そしてその味わいはイタリアのそれと比べれば素朴、朴訥な感じは受けるが、その自然さ、ピュアさがストレートに迫ってくる。まだまだ秘められたポテンシャルがありそうな国だ。

【Wineshop FUJIMARU 3,390円】

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2014年4月 5日 (土)

ジョヴァンニ・テレンツィ チェザネーゼ・ディ・オレヴァノ・ロマーノ コッレ・サン・クイリコ2011 DOCチェザネーゼ・ディ・オレヴァノ・ロマーノ

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イタリアワインにおける中部、ラツィオの位置づけは高いとは言えない。永遠の都ローマを擁し、ブドウ栽培も古来から盛んであった土地柄であるから、ワイン自体を目にすることはあっても多くはカジュアルなワインで、フラスカーティのようにやや甘みもある飲みやすい白ワインの産地という印象だ。

しかし、最近この地方でも徐々に赤ワインに目覚ましいものが出てきているという。その代表格がラツィオ南部を中心に栽培されているチェザネーゼによる赤ワインだ。

チェザネーゼは主にラツィオ州で栽培されてきたブドウで、チェザネーゼ・コムーネとチェザネーゼ・ダッフィーレの2種があり、前者はボンビーノ・ネーロとも呼ばれる。柔らかな酒質と繊細なタンニンが特徴。このカンティーナはローマの南東50kmにあり、12haの畑を4人の家族で経営し、チェザネーゼによるブドウのポテンシャル向上に早くから貢献してきた。このワインはチェザネーゼ2種をブレンドしている。

色はやや暗めの赤みの強く感じられるルビー色。香りはクランベリー、イチゴシロップ、花のエッセンス、バックにややミントの香りも感じられる。

口に含むと冷涼で穏やかな赤い小粒なベリーの酸味を感じ、その酸味に導かれた細身の果実味に溶け込んだ繊細で小粒なタンニンが軽やかに踊る。小ぶりだが要素は緊密で、全てが掌中に収まっているような小気味いい感覚。中盤から後半にかけても荒ぶることなく、安定したピュアな果実味を押し出す姿勢を崩さない。

余韻は細かなタンニンが細めの果実味を支えるように押し上げ、そして一気に引くような流れを見せて昇華していく。

トスカーナやピエモンテのワインに比べるとボリューム感、押しの強さという意味では一歩譲るだろうが、それでも果実味の柔らかさ、繊細さ、そして後半にやや押し戻す構成の巧みさは、その展開が解りやすく好ましい故に印象に残るだろう。これからのラツィオ州のポテンシャルを垣間見せてくれるワインだった。

【エノテカ・イル・ソッフィオーネ 2,500円?】

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2014年4月 1日 (火)

シャトー・ル・ゲ マノワール・ド・ゲ2007 AOCポムロール

140331manoirdegayたまにはボルドーも飲むんだが、その場合は比較的柔らかい、やさしめの味わいの方が好ましい。地域で言えばサン・ジュリアン、サンテミリオン、ポムロールあたりか。

ポムロールはボルドー地区のブルゴーニュ、とも言われていたようだが、ボルドーの生産者にとってはブルゴーニュに劣後したような表現は決して褒め言葉とはならないに違いない。シャト・ペトリュスを最高峰に擁し、今でこそボルドー右岸における雄たる存在となったが、かつてはそれほど注目を浴びた地域ではなかった。しかし比較的早く飲めて、それでいてきめ細かで滑らかな質感のワインは、現代人の味覚、感覚にマッチしたかのように一気に広まった。

シャト・ル・ゲはシャトー・ペトリュスの北西に位置し、元々はペトリュスを運営するムエックス社が管理していた。しかし、シャトーの良い部分を売却するなど、決して高い評価を受け続けたとは言えなかったが、最近はミシェル・ロランのコンサルなどを受けて徐々に品質を高めてきている。ただ、やや価格的には高い印象は否めない。このセカンドワインはメルロー100%で、若木の葡萄から造られている。

色は黒味がしっかりと感じられる、凝縮感を伴ったダークルビー。香りはカシス、黒ゴム、ヴァニラ、ビターチョコ、ココナッツオイルのような甘めの香りが支配的。

口に含むと滑らかで整ったベリーの果実味、その果実味に溶け込んだ細かで柔らかなタンニンをストレートに感じる。軽やかでバランスの良い味わいは好ましく感じるものの、同時に過ぎた中庸さという印象にもつながる。若木ゆえかやや苦みもあるが、全体には温かみとふくよかさを持った果実味主体の穏やかさが落ち着いた味わいを導き、後半の無理のない調和に満ちた味わいを形作る。

余韻はさらりとした雑味の少ないベリーの後味がすっと抜けていき、最後まで細身の味わいを残しながら引いていく。

色の濃さからすれば案外あっさりした味わいの印象は、メルローらしい品種の特性なのかもしれないが、全体ではやや起伏に乏しい印象を受けた。しかし過剰さのない均整のとれたボディを伴ったこのワインは、単独で飲むよりも料理と合わせることでより違った表情を見せるかもしれない、そんなポテンシャルを感じさせてくれた。

【成城石井三番街店 3,700円?】

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