フォトアルバム

カテゴリ

最近のトラックバック

お気に入りリンク

« 2013年12月 | メイン | 2014年2月 »

2014年1月

2014年1月29日 (水)

朝日町ワイン ソーヴィニヨン・ブラン2012 山形県朝日町

140126asahimachi日本ワインの白ブドウ品種と言えば甲州、その後に続くのはデラウェア、ナイアガラが頭に浮かぶが、その他シャルドネも勢力を強めつつある。しかし、自分としてはソーヴィニヨン・ブランもまた適しているのではないかと常々思っていたが、やはり徐々にそうしたワインが出回るようになってきた。

朝日山ワインの創業は昭和19年。しかし、元々はワイン醸造時に生成される酒石酸をレーダーに用いる部材の代替品として生産することが目的だった。その後昭和54年に今のワイン生産を始めて、このソーヴィニヨン・ブランは山形県で栽培されたブドウを用いて、スキンコンタクトを数時間行うことで旨味を引き出している。

色は薄めの張りがある澄んだレモンイエロー。香りはライムの柑橘系の香りに、シロップ、チューインガムの甘いニュアンスの香りが寄り添う。

アタックは滑らかなだが芯のある細めの酸味と、柑橘の青い、やや苦みの伴う果実味がバランスよく迫る。青い柑橘系の果実味は充実しており、旨味もきれいに乗って心地よい。ややキャンディのような味わいが平易に流れる感じは残るが、ソーヴィニヨン・ブランらしい青い香りがフレッシュ感を引き出し、後半にかけて全体の味わいをクリーンな印象に保つ。

余韻はクリーンなライムの甘みと共に、ハーブの清涼感漂う香りが爽やかに広がりつつ、きれいな後口を残して引いていく。

爽やかな香りとクリーンな旨味で、気軽に飲めつつ品種の個性もしっかり感じさせる味わいに仕上がっている。ソーヴィニヨン・ブランは冷涼な場所ではハーブ的、温暖な場所ではトロピカルな味わいになるというが、その中間を保っているところがこの品種の日本での相性を予感させているように思えるのだが、このワインを飲んで今後の展開がますます楽しみだ。

【酒商熊澤 2,000円?】

 

2014年1月28日 (火)

理想像を描く ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ展

140126syavanne_2ピュヴィス・ド・シャヴァンヌは日本での知名度は高くないかもしれないが、明治時代の西洋絵画にも影響を及ぼした人物で、その本格的な個展が渋谷で開催されている。

彼の画風は自然な古代風の風景、靄のかかったような空気感、そして視線を交わさず瞑想にふけるかのような表情の人物表現にある。その絵画は観る者に抵抗感を与えない。しかし、同時にゴッホの絵画とは対極的に胸に迫るものがない、インパクトに欠けることも事実だ。

彼の芸術的才能は壁画に発揮され、ブルジョワの私邸、公共建築に多く用いられた。その壁画を縮小再生させた作品も数多く、この美術展でもそうした作品が多く展示されている。彼が壁画で人気を博したのは、その作品が見る者に抵抗感を与えず、美しいものを描くという目的に昇華されているからであろう。

そうした背景が彼の芸術が同時代の印象派の画家に比べて、一段も二段も低い評価を与えられている理由だと思う。しかし、実際に鑑賞してみれば、そうした一般的な評価を置いても人物、特に建築描写の確かさ、構図構成の見事さ、そして調和を保ち全体で美を表現する作品の総合性は秀でたものがある。それは単なるアカデミズムに陥らない、彼なりの美へのこだわりが感じられた。

気品あふれるその作品群は、「西洋」という言葉を聞いて思い浮かべる古代建築、神々の世界、色の白い美しい女性といったイメージに溢れている。だからこそ明治の西洋画家たち彼の作品から西洋を学ぼうとしたのだろう。西洋の理想を描いた画家の世界に満たされた、優しい雰囲気の漂う美術展だった。

シャヴァンヌ展 -水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界-

Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)

2014年1月2日~3月9日

2014年1月27日 (月)

ボデガス・ブレカ ブレカ2011 DOカラタユド(スペイン・アラゴン州)

140126brecaスペインワインは重い、そんな印象が強かったが、最近は世界的な潮流に合わせてバランスの良さを重視し、果実味と酸味のきれいなワインが多くなりつつあるようだ。

重いワインといえば、果実味に凝縮感があり、甘みも感じられる赤ワインという印象だが、かつてはそうしたワインを重んじた傾向がアメリカの雑誌の評価にも表れ、著名なロバート・パーカーの評価を得るために好みに合うようなワインを作る生産者も多くなった。

このスペインワインもパーカーが2010年ヴィンテージに94点という高評価を付けたそうだ。スペインの北東、アラゴン州で知名度も高くないDOカラタユドは大陸性気候で標高500-800mの高地で栽培されるブドウは主にガルナッチャ、昼夜の寒暖が激しいので酸味が保たれる素地がある。この地で栽培されるブドウは古木が多く、このワインも樹齢60年以上の古木から造られる。

色は濃密な紫ルビー色。香りはチョコレート、ダークチェリー、黒オリーブ、肉のような生っぽい香りも感じられる。

口に含むと濃密な完熟ベリーの果実味が一挙に押し寄せるように感じ、上顎に張り付くようなインパクトがあるが、やがてその果実味は細かな酸味が柔らかく包み込む。フルーティな果実味はストレートに迫り、複雑さよりも素直さを感じさせる。中盤に座るタンニンは細かだが量があり、やや口の中にゴツゴツした感じが残るが、後半は意外に抑制とバランスのとれた果実味が広がる。

余韻は熟したベリーの甘みが太いタンニンと共に広がりつつ、旨味の豊かな味わいを感じさせながら引いていく。

ガルナッチャらしいベリーの旨味がしっかり乗りつつ、それを引き締めるに相応しいタンニンも感じられた。美味しいとは思うけど、94点の評価を得るほどの凄味があるかというと、そこは疑問点。雑誌の評価と個人の感じ方は当たり前だけどなかなか一致しないな、というのが素直な感想かな。

【東急百貨店渋谷本店 2,400円】

2014年1月26日 (日)

エキサイティング!現代美術 フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション展

140126ppompiduパリには何度か旅したが、最初に訪れたときのポンピドゥーセンターには圧倒されると同時に、配管と色が剥き出しになってなんと醜悪な建物だろう、と感じた記憶が残っている。そして、その中に収蔵された現代美術も当時は全く理解できなかった。

しかし、何度か訪れてこのスポットは最も愛すべき、エキサイティングな場所へと変わった。その最新収蔵品を展示する美術展がこのフルーツ・オブ・パッション。25人、31作品と少数ではあるが大型の作品が多く、そのどれもが観る者にイマジネーションを迫らせる、力のある作品だった。

序章(イントロダクション)に置かれた作品は白、灰色の単色もしくは白と水色の線を交互に用いた作品が置かれている。表面的には無機質な作品に思えたが、近くで見れば絵具の跡、線のかすれなどがあり、作品から沸々とした生気が感じられた。そしてその瞬間、作品は観る者の感情を吸収して多様な解釈が可能になり、いつの間にか作品と対話する自分の存在に気が付く。

この美術展ではそうした対話、それはまさしく独り言に違いないのだが、様々な解釈が可能な作品が多かった。現代美術は難しいと言われているが、それはその作品から何かを読み取らなければならない、という無意識の義務感から発しているのだと思う。だから、最初からそれを放棄してしまえば、自ずから楽になる。美術展のポスターにあるエルネスト・ネト「私たちはあの時ちょうどここで立ち止まった」、天井からぶら下がる肌着のようなものの中に香辛料が詰め込まれて不思議な甘い香りを発しているその作品も、題名を気にしなければなんともエロティックな気分にさせられる、楽しいモニュメントではないか。

単に対峙するだけでなく、作品自体に取り込まれるような不思議な感覚に満ちたエキサイティングな美術展だった。

フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション

兵庫県立美術館

2014年1月18日~3月23日

2014年1月24日 (金)

ダヴィッド・モロー サントネィ キュヴェ・S 2010 AOCサントネィ

20140124davidmoreauサントネィという地域はブルゴーニュ南端にあって、それほど知名度に恵まれた場所とはいえないだろう。しかし、南であれば太陽の光に恵まれてブドウは熟すポテンシャルを有するはずで、北の酸味、繊細さとはまた違った個性をワインに与えるに違いない。

今、この地で注目を浴びている造り手がダヴィッド・モロー。まだ若い彼が祖父から葡萄畑を受け継いだのは2009年だが、その前の年1年間はドメーヌ・ド・ロマネ・コンティで働いた経験を持つ。そのワイン造りはテクニックを排した素直かつ自然なものだ。キュヴェSはサントネィ中腹の村名畑、コルニエールとシャルムの水はけのよい畑に植えられた古木から造られる。

色は少しうす濁りの感があるルビー色。香りはやや閉じ気味だがラスベリー、チェリー、アセロラなど赤い小ぶりの果実の香り、その他にやや湿り土のニュアンスも感じる。

口に含むと瑞々しいベリーの酸味を感じ、それと同時に凝縮感がありつつも繊細さを保ったやや内向的な果実味が現れる。ボディは中程度だが、細かで密な重みのあるタンニンが味わいを重心の低いものにしている。真っ直ぐな味わいは好感が持てるが、やや単調で起伏に欠けるところはあるが、自然でピュアな旨味が率直に感じられる中盤から後半にかけての安らぎは心地よい。

余韻はふくよかな果実の甘みが穏やかに薄く柔らかく広がり、口の中に浮遊感を与えつつ、優しい後味を残して引いていく。

その言葉とおりテクニックを感じさせない率直な味わいは好感が持てる。まだ跡をついで1年のワインであれば、複雑さまで求めるのは早計だろう。これから年を経てどのように変わってくるか、これからが楽しみな造り手に違いない。

【エーテルヴァイン岡崎店 3,800円?】

2014年1月20日 (月)

カソルラ復調の兆し アーセナルvsフラム戦

140120arsenalいつもの事とはいえ、怪我人が続出してきたアーセナル。ラムジーに続いてウォルコット、ウォルコットは今季絶望の長期離脱が避けられなくなってしまい、調子が上がっていただけに痛恨の限り。

2月にはリヴァプール、マンU戦、CLのバイエルン戦と強敵が続くだけに下位相手には勝ち点3を積み上げることが何より大事。フラム戦の先発はGKスチェスニー、DFモンレアル、コシエルニー、メルテザッカー、サニャ、MFウィルシャー、フラミニ、カソルラ、エジル、グナブリー、FWジルー。

序盤からボール支配はアーセナルだったが、思ったようにパスがつながらず、トップに張るジルーまで運べない。パスミスも目立ち、中盤の守備が不安定なアーセナルは、逆にフラムにカウンターを狙われ危ない場面も迎えたが、そこはスチェスニーが集中して防ぎ得点には至らないものの、フラストレーションがたまる前半だった。

後半に入って徐々にアーセナルが修正し、リズムも良くなってきた感じが出てきたところで57分、左から中央に入ってきたカソルラからエリア内でジルー、ウィルシャー、最後は再びカソルラと、らしい早く細かなパスワークで崩しきってアーセナルが先制点を挙げた。

そしてその直後62分にはモンレアルの左からのクロスを相手DFが弾いたボールが、ゴール正面のカソルラの足元に落ちてミドルが決まり、連続の得点が決まってフラムを突き放した。そして試合はアーセナルが逃げ切り、終わってみれば2-0の完封で首位を守った。

前半は噛み合わず運動量も少なく、かえってフラムにカウンターで攻め込まれて失点してもおかしくなかったが、今季はこういう場合でも失点には至らないのが不思議だ。そして後半はその不振を修正して、短い時間帯で連続得点で突き放す、という展開が続いている。安定感には欠ける試合運びだが、それでも勝ちきるところが今年の勝負強さを表しているようだ。

この試合ではカソルラの2得点は収穫だった。今年はエジルが司令塔の位置にいるため、ウィングとしての起用が続いているためか去年ほどフィットしてない感があり、前節もミスで失点を招くなど動きが冴えなかった。今節でも前半は良くなかったが、後半1点目のエリア内へのゆっくりした侵入から早いパス回しへの転換で相手DFを翻弄する動きはさすがだった。2点目の正確なシュートも昨年を彷彿とさせたし、この試合が復活の転機となることを信じたい。

良くないなりに勝ち点3を積み上げたアーセナル。質も欲しいが、まずは結果を残すことが大事な時だからこの勝利を素直に喜びたい。

2014年1月19日 (日)

レ・カイユ・ドゥ・パラディ(クロード・クルトワ) ラシーヌ・ブラン2010 ヴァン・ド・フランス(ロワール)

140119racinesclaudecourtoisラベル、エティケットはそのワインを現す重要な要素に違いない。それを見た瞬間に買おうか、買うまいかを判断することもある。

その意味でこのラベルはどうだろうか。フランスワインとしては異色と言えるだろう。大地に深く太く根を張る武骨な図柄は、フランスという国が一般に与える洗練された印象とは異なる。しかし、このワインの生まれた環境はまさしくこの絵そのものなのだろう。

クロード・クルトワが醸す白ワインの名前はラシーヌ(根)。植物の根幹をなす、栄養源を大地から吸い上げる部位が植わるのは、ドメーヌの名前に表された「楽園の石灰質土壌」。この地でクロード・クルトワは栽培だけでなく、醸造にも極力人工的な作為を加えないワイン造りを志向する。

1995年からブルゴーニュ出身のクロード・クルトワは、放棄されたロワールの畑を手入れし、本来のポテンシャルを取り戻した。そしてAOC制度に頼らない、自由なワイン造りを貫いている。そして、今はその息子たちも彼の思想を継ぎつつ、ワインを作り始めていて、ジュリアンは彼の三男。http://cesc22.blog.eonet.jp/default/2014/01/2011-2d08.html この白ワインはソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ロモランタン、ムニュ・ピノによるもの。

色は枯れた感じのある薄めのゴールドイエロー。香りは10円玉のような金属的香りをまず感じ、グレープフルーツの果実味が中央に座り、そしてローズマリー、バジルのハーブの香りをバックに感じる。

口に含むと、外郭はやや硬質だが密な酸をまず感じ、その酸と共にハーブの香りが口の中に広がりつつ刺激の少ない熟れた果実味が座り、穏やかな旨味が中盤の印象を形作る。甘みは節度を保ちクリアで、中盤から戻るフレッシュな酸が絡み、味わいを引き締める。

余韻は浮き上がる苦みのミネラル感を感じつつ、最後まで柔らかな果実味を保ちながら穏やかに引いていく。 

無理の少ない優しい味わいで、じっくりと向き合うには相応しいワイン。親子でつながるワインの味わいも感じられ、面白いティスティングのひと時となった。

【エーテルヴァイン岡崎店 4,000円?】

2014年1月18日 (土)

ジュリアン・クルトワ オリジネル2011 ヴァン・ド・フランス(ロワール)

140118juliencourtoisoriginel11土着王国イタリアには譲るのかもしれないが、フランスにも多くの土着品種があり、それを愚直に栽培しワインとして届ける生産者がある。特にロワールはそうした傾向の強い土地柄だと思う。

ジュリアン・クルトワはロワールでも著名な自然派ワインの生産者だが、その彼のワイン、オリジネルはロワールのブドウ品種、ムニュ・ピノから造られる。ムニュ・ピノはアルボワとも呼ばれ、ロワールの土着品種で、自然派による古来からの品種復興の流れで最近は良く目にするようになった。

色は粘質のある、やや薄めのゴールドイエロー。香りは開けた当初はビオ的な香りが鼻に残ったが、時間をやや置いた後にはオレンジ、蜂蜜、黄色の花が漂い、合成のりのような香りもバックに感じられる。

アタックは滑らかで、やがてグレープフルーツのような果実味が細めの純度の高い酸に導かれるように広がってくる。やや堅めの酸だが刺激は少なく、じわじわと染みるような浸透力を持ち、その酸に調和する果実味は程よい甘みが温かみを感じさせ、穏和な後半の印象へと続く。

終盤は優しい甘さが全体にほどけるように昇華し、あと一杯を欲するような渇きを残しつつ、切れ良く引いていく。

旨味はしっかりありつつも、後味の綺麗な飲み飽きのしないワイン。若干シュナン・ブラン二似ているが、それほど甘みに粘りがないところが品種の違いと言えるだろうか。なかなか個性的なワインだったな。

【エーテルヴァイン岡崎店 3,500円?】

2014年1月13日 (月)

信ずる者は己のみ 皇帝フリードリッヒ二世の生涯

140113fridrici今まで旅行した場所で最も印象深い街としてパレルモを挙げることに躊躇はしない。訪れたのは6月だったが、曇りない青空から照りつける容赦ない陽射し、そしてそれを避けるように入った聖堂の内部は、金色のモザイク全体から発せらる、外の刺すような光線とは全く異質の包容力溢れる光に満ちていた。

ローマ帝国時代から穀倉地帯として諸民族の争いの場となったシチリアは、ローマが去ったのちはイスラム、ノルマン、ドイツ、フランス、スペインと征服者は絶え間なく交代したが、その中間に位置するのがフリードリッヒ二世だった。シチリア王にして神聖ローマ皇帝、キリスト教俗界の権力を一身に集めた男は歴史上失敗を重ねた十字軍の中にあって、戦いでなく和平交渉でエルサレムを解放した壮挙でも知られる。しかし、同時に歴代の法王から破門され、彼の死後は一族根絶やしにされ、彼の像も破却、歴史から抹殺刑を受けるような破目に至った。

この興味ある人物だが、暗黒と称される中世、そして宗教を背景としているが故に日本人には馴染みがなく、採り上げられることは世界史の教科書以外は殆ど無かった。しかし、やはりこの人は違った。イタリアの歴史物といえばこの方を置いて他にはない、塩野七生の最新作はまさにこの人の生涯を扱ったものとなった。

「皇帝フリードリッヒ二世の生涯 De Imperatoris Friderici Secundi Vita」、この人の生涯を簡潔に述べるとすれば己の信ずるままに生ききった、ということであろうか。言葉にすれば簡単な事かもしれないが、現世においても世間体、社会のルールに絡まれて自分の思うように生きることは難しい。まして、当時は俗界の最高権力者としても、キリスト教の教義に反して意思を行使することは許されない時代だった。

しかし当時としては甚だ理性を重んじたフリードリッヒは、キリスト教の教義は認めつつ、聖界と俗界の権力行使範囲を明確に切り分けた。それが全ての権力の源泉であることを自認するカトリック教会とは相容れず、彼の生涯を常に戦いの場へ置くことを強いた。異教徒とは和解できた彼だったが、キリスト教会との権力闘争に疲弊し、かつ彼自身があまりに優れていた故に後継者に恵まれず、彼の事業は一代で途絶えることになる。

しかし彼の理念は滅びることなく、同時代の人間に影響を与えて後世に伝わることとなった。残された著書の中にもあるように、彼はあるがまま、見た物を重んじた。魂の世界を信じてはいなかった。それはまさにルネサンスを先駆ける人間本位の考え方であった。中世の歴史にあってただ一人燦然と輝く奇跡的人物像、それが皇帝とあれば魅かれない人がいるだろうか。フリードリッヒ二世は一族に権力を継承させ得なかったことで歴史上敗者に位置づけられるのかもしれないが、この著書を読めば結果を超越した信念の一生であったことが理解できる。時代に愛されなかった皇帝はまさにルネサンスを先駆けたのだ。

皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上下)

塩野七生著

新潮社刊

2014年1月12日 (日)

ヴィニャイ・ダ・ドゥリネ スキオペッティーノ ラ・ドゥリネ2010 IGT(フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州)

140110dulineschioppettino2_2イタリアの魅力は土着の品種にあるというのは信念だし、最近は手軽にいろいろな品種を楽しめるようになったのは嬉しい限り。しかし、それでも感嘆には触れることのできない、「暴れん坊」的な品種もある。自分にとってはフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のスキオペッティーノもその一つだ。

スキオペッティーノは別名リボッラ・ネーラというフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の土着品種だが、DNA検査の結果リボッラ・ジャッラの変種ではないことが明らかとなった。

語源がスコッピアーレ(爆発する)から来るように、口の中で爆発するような果実味とタンニンを伴うという印象があるスキオペッティーノ。この品種をうまく手なずけるには生産者の力量と度量が必要に違いない。ヴィニャイ・ダ・ドゥリーネは最近知った作り手で詳しくは知らないが、果たしてどのようにこの品種の特性を表現するだろうか。

色は魚の血のような赤身を強く感じるルビー色。香りはカシス、バラ、ドライフラワー、ローズマリー、インクを感じ、バックにやや粘質、土っぽさを感じさせる。

アタックは瑞々しい赤い果実のピュアな酸味が突き進み、その直後スレンダーな果実味が導かれる。フォルムがしっかり感じられ、細かだが互いにこすれるかのようにこなれないタンニン感は若干あるものの、緻密な構造の内部へ引き込まれるようなエネルギーを感じる。酸味と果実味のバランスは良いが、ベースに座る荒削りの渋みがこのバランスを巧く崩してワインに複雑さをもたらす。

余韻は再びピュアで透明度の高い酸が戻り、柔らかな果実味が舌の表面を流れるように粗さをなだめ、綺麗な旨味を残しつつ引いていく。

序盤のピュアさ、中盤は荒削りさから落ち着き、そして後半は再び静謐な味わいを展開する多面的な構成が、今まで飲んだ厚みで迫るスキオペッティーノとは違う展開、複雑さを感じさせた。土着品種の個性とポテンシャルを表現できる生産者の技量に脱帽。Good JOB!

【エーテルヴァイン岡崎店 4,000円?】

2014年1月11日 (土)

ジローラモ・ルッソ エトナ・ロッソ サン・ロレンツォ2010 DOCエトナ・ロッソ

140110gorolamorussoイタリアワインの品種で三つ好きなものを挙げろ、と云われればネッビオーロ、ドルチェット、そしてネレッロ・マスカレーゼとなるに違いない。前者2種はピエモンテ、そして後者はシチリアと南北両極ではあるが、ネッビオーロとネレッロ・マスカレーゼには共通するものがあると思う。それははっきりした酸味と、ボディを形作る骨格の明瞭さだ。

かつてシチリアと言えばネロ・ダヴォーラだったが、今はネレッロ・マスカレーゼが凌駕したと行っても言い過ぎではないだろう。シチリアにどっかと座るエトナ火山、その周りに広がるブドウ畑には火山性土壌に適したネレッロ・マスカレーゼが適しているとされている。エトナが注目されるにつれて、ネレッロ・マスカレーゼというブドウにも注目が集まることは自明だった。

ジローラモ・ルッソは今のオーナー、ジュゼッペ・ロッソが2003年に父の跡を継いでワイナリーを継承してから評価を上げてきた。この当時からフランケッティ、フランク・コーネリッセンといった生産者のネレッロによるワインが世に出て、そして遅れてきたジローラモ・ロッソもようやく日の目を浴びるようになってきた。

サン・ロレンツォは標高750mのコントラーダ(クリュ:畑)から生み出されるワインで、樹齢60~100年の古木から収量を抑えたブドウを栽培している。

色は黒味がかった落ち着いた色調のルビー色。香りはフランボワーズ、ザクロ、巨峰の皮、漢方薬の香りも感じられる。

口に含むと穏やかで低めの酸と、やや粗いタンニンの渋みを伴った果実味が同時に迫ってくる。果実味は細身だが安定しており、タンニンによる堅固な骨格に包まれた中に流麗な質感が感じられる。中盤にやや乳酸の印象が過度に立つ感じはするが、後半には土っぽさのニュアンスも訪れ、重心の低い落ち着いた味わいをが品格を保つ。

余韻は綺麗な熟したベリーのような甘みが薄くなだらかに広がり、最後まで刺激の少ない穏やかな安らぎを感じさせる。

抑揚は少ないが、安定感に満ちて、かつ浸透力がある。まだ若干こなれないところはあるけれど、今後が楽しみなワインだな。

【Wineshop FUJIMARU 4,000円?】

 

2014年1月10日 (金)

レ・コステ ビアンコ2008 ヴァン・ド・ターブル(イタリア ラツィオ州)

140106lecoste自然派ワインとよく表現されるが、実際には千差万別の感があり、それを標榜する造り手それぞれの考え方に依るのでワインのカテゴリーとしては捉えにくい。一言で言うとすれば、栽培から醸造まで極力人の介入を抑えたワインというところであろうか。

その端緒はフランス、有名なボジョレーの作り手であるマルセル・ラピエールであるだろうが、最近はイタリアでもスローフードの流れを反映してか自然派の勢いが止まらない。このレ・コステ、ジャン・マルコ・アントヌーツィもその一人だろう。

イタリア中部ラツィオ州のこのワイナリーでは、火山土壌の畑に土着品種を栽培し、栽培はビオディナミ、醸造も化学薬品を用いず短期のマセラシオンを経て、洞窟の中の木樽でアルコール発酵、1年の熟成を行う。この白はプロカニコ主体で、プロカニコはトレッビアーノ・トスカーノの別称であり、フランスではコニャックの原料として用いられるユニ・ブランと同一遺伝子型になる。

色は少しうす濁りの麦わら色。香りはドライフラワー、リンゴミツ、アプリコットジャム、セメダイン、ニッキ水。

アタックは鮮烈な酸の刺激が舌先を突くが、密で熟したアプリコットのような果実味が染み出てくるように広がる。高めの酸は、やや硬質な果実味に浮力をもたらし、無駄のないピュアな中盤の味わいをそこから支える。中盤から後半はミネラル感と、オロロソに似た酸化のニュアンスを伴ったふくよかな旨味が、穏やかな膨らみを伴って裾野を広げるように展開する。

余韻は雑味のないピュアな甘みが心地よく座り、意外に飲み飽きしないさらりとしたキレの良さを感じさせながら引いていく。

色からしてかなりビオ的なワインだと思ったが、飲み心地はありがちな還元香もあまりなく、味わいも高い酸によって軽快かつピュアなワインに仕上がっている。久々にこういう「濁り系」の白を飲んだけど、なかなか新鮮な感じのするワインだったな。

【エーテルヴァイン岡崎店 4,000円?】 

続きを読む »

2014年1月 4日 (土)

ペッケニーノ ドリアーニ ブリッコ・ボッティ2008 DOCドリアーニ

131231doglianiブドウの中でドルチェットという名前ほど優しさ、柔らかさを思い起こさせるものはないだろう。すでにその名前から「ドルチェ(甘い)」と表現されているが、これは勿論ワインが甘いのではなく、食用として供された際の甘さを表現しているのだという。

糖度があるという事は、ワインとしてのアルコール度が上がり、ボリューム感が出ることを意味するが、正直なところドルチェットのワインからそこまでのボリュームを感じたことはないが、これは北部の気候で甘い果実に乏しい土地の感覚故だったのかもしれない。

ドリアーニというDOCGはあまり聞きなれないが、2011年にピエモンテ州のDOC、ドルチェット・ディ・ドリアーニとドルチェット・デッレ・ランゲ・モンレガレージを合わせて成立した新しいDOCGで、ドルチェット100%の赤のみに許される呼称となっている。

ペッケニーノはそのラベルからもわかるように、この地を本拠とする家族経営のワイナリー。オルランドとアッティリオのペッケニーノ兄弟はドルチェットから最良のワインを産みだすことで定評があり、このワインはわずか1haの区画、ブリッコ・ボッティという畑から生み出される。

色は紫が強くかかった濃いルビー色。香りはブルーベリー、スミレ、インク、 ドライフラワー。甘く濃密な香りが香ばしく放たれる。

アタックから濃密で熟したプラムの果実味が一挙に開いてくる。濁りのない繊細な酸は、熟したベリーの果実味と緻密に絡み合い、一体となって迫ってくる。タンニンの渋みも酒質に調和して丸く柔らか。中盤からは果実味が解けて現れる優しい甘みが弧を広げるように雄大になだらかに広がり、穏やかな味わいを展開する。

余韻はややタンニンの渋みが残るが、クリアな酒質が最後まで透徹し、抜けの良い甘みが心地よさを演出しつつ、なめらなに優しく引いていく。

ドルチェットの特性、押しつけがましさを出さず、それでいて緻密な甘みのニュアンスを見事に引き出している。飲み疲れしない味わいは、1日をゆっくり過ごす友として相応しいワインといえそうだ。

【エノテカ・イル・ソッフィオーネ 4,000円?】

 

2014年1月 2日 (木)

ココファーム 月を待つ2011 栃木県足利市(ブドウ:北海道余市)

130922tshukiomatsu去年は一挙にクラフトビールの店が多くなった印象があるが、クラフトビールと一緒に日本ワインも置く店も増えたので、日本ワインをグラスで楽しむことが気軽にできるようになったことは嬉しい。今後はレストランでもそういうケースが多くなってくるようであれば、日本ワインの裾野も広がったといえるんだろう。

日本ワインも最近一挙に広がったような印象を持つが、じつはその歴史は古い。このココファームも開業は1980年と、既に30年の歴史がある。

ココファームは障害者支援施設が開いたワイナリーで、開業以前から栃木の地で障害者自立のために畑を開墾し始めたのが1958年という。今では年産12万本までに拡大し、日本ワインの作り手としては比較的大きなワイナリーに成長した。このワイナリーは栃木以外の買いブドウでもワインを作ることで、このブドウは北海道余市で栽培されたケルナー種によるもの。

色は硬質なゴールドイエロー。香りは白い花、青めのバナナ、栗、ハーブ、灯油、スパイシーなカレーの香りも感じられる。

アタックは細かな泡の感覚が舌先をくすぐり、その直後ドライな果実味と真っ直ぐな鋭角の酸が疾走するように口の中に広がる。残糖分は殆ど感じない。中盤から後半はドライで、ふくよかな香りとは対象に、タイトな味わいを形作る。

余韻はナッツの香ばしい香りが広がりつつ、しっかりした苦みが引き締めつつ、締まった味わいを収束させていく。

ケルナーの香り高さとタイトナなボディを活かしつつ、すっきりした味わいに仕上げている。その土地で特性を表すブドウを使って自分の造りたいワインを表現する、自家栽培にこだわらない手法も十分ありかな、と思うな。

【パピーユ・ジャポネーズ 3,000円?】

勝ち点3をもぎ取った アーセナルvsカーディフ戦

140102arsenal元日早々の試合はプレミアならでは、ということで、この日はアーセナルのリーグ戦新年初戦のカーディフ戦。

時間がないので簡潔に書くと、結果は2-0のアーセナル完封勝利となったが、実際のところは先制点が87分と終了間際、途中交代でポドルスキに代わった移籍待望(?)ベントナーが、モンレアルの右からのクロスを頭で合わせたサニャのボールをGKが弾いたところを押し込んで決まったという、非常に苦しい展開の試合だった。ボールポゼッションでは圧倒していたが、引き気味の相手に攻めあぐねる昨年来の悪い展開にはまってしまっていた印象だった。

この直後、ロスタイムにはウォルコットが決めてダメ押しとなり、苦しい試合を勝ちきって貴重な勝ち点3を積んだ。今後は2月のリヴァプール戦までは上位との試合がないので、この期間をいかに勝ち点3を積み上げていくかに優勝はかかっている。2位シティ、3位チェルシーとの間はわずかに勝ち点1差、まだまだ楽観はできる状況ではないけれど、幸先の良い結果であることは間違いない。期待がまた膨らんだ元日の一勝だった。

2014年1月 1日 (水)

ヴァルニエ・ファニエール グラン・クリュ キュヴェ・サン・ドニNV シャンパーニュ(アヴィーズ)

131231varnierfannier新年の風物詩である福袋、自分はこれが苦手。好きなものを選んで買うのが好きなので、たとえ全体でお得と言われても、もし自分が嫌いなものが入っていたらと思うとどうしても手が出ない。生来のネガティヴ志向のせいなのかもしれないなぁ。

このシャンパーニュ、実は福袋ということで購入したのだが、中身は既にわかっていた。しかも、この生産者のシャンパーニュが飲んでみたかったので買ったという次第。

ヴァルニエ・ファニエールはシャルドネによるシャンパーニュで秀でたコート・ド・ブラン地区の生産者。アヴィーズ村はシャルドネ特級畑にランクされ、濃密な果実味と鮮烈な酸、ミネラル感を調和させた太い味わいのシャンパーニュを作ると言われ、ジャック・セロスもここを本拠とする。ヴァルニエ・ファニエールがこの村の最良の区画で醸すキュヴェ・サン・ドニは、樹齢60年以上の古木のシャルドネで造られる、彼が祖父に捧げるオマージュ。

色は緊張感のある薄めのゴールドイエロー 香りは青リンゴ、フレッシュチーズ、マッシュルームの香り。快活で繊細な泡が全体から勢いよく立ち上る。

アタックから乾いた残糖分の少ない味わいながらも、凝縮感のある力強い果実味を感じる。酸はアタックこそ鮮烈でタイトだが、ソフトさも兼ね備えてメリハリを利かせる。そしてベースに座るほろ苦さが全体をグリップし、舌の横を引き締めるようなミネラル感と共に中盤をコントロール。複雑さよりも軸のぶれないスマートでクリアな味わいが透徹している。

余韻は一転、ふわりとした浮遊感を伴う温かみのある味わいが漂いつつ、切れの良い後味を細く長く残しながら引いていく。

シャルドネ100%ということで厳しめの味わいを想像したが、鮮烈でありつつ柔らかさも表現するバランスの妙味を表現している。また一つ好きな作り手が増えたという実感。

【Cave de Terre淡路町店 福袋(他店通常価格10,000円)】